こんな体験はありますか?
久しぶりに清々しい気持ちで、五感を通して「生きている喜び」を感じることができた日。美しい風景を見たり、自分が求めているドンピシャなモノに出会えたり、美味しいものを食べたり、誰かにポジティブなコメントをもらえたり、楽しい会話ができたりなどして、「自分の人生悪くないな」と思えた日。
ところがその翌日、心の空模様が大きく変化して、昨日のあの晴れやかな気持ちが嘘のように感じてしまうこと。何かをきっかけに、清々しいブルースカイを分厚い灰色の雲が覆いはじめます。自分に自信が持てなくなったり、現在の境遇を嘆きたくなったり、他人が羨ましく思えたり。昨日感じた生きる喜びは幻で、これが自分の現実なんだと考えてしまうー。
曇り空や雨模様が永遠に続かないように、心の空模様も自然と回復してゆきます。再びお天気が変わってゆくのを受け身で待ってみるのも悪くないのですが、自ら心の空模様を変える方法を試して、心を調整することもできます。
まずは五感で整える
私たちはちょっとした小さな出来事で元気になったり、逆に気持ちが沈んでしまったりもする流動的な感情を持つ生き物。そのことを理解した上で、自分の状態を調整してゆくことが、心の空模様を整えるコツです。
心を整えるためんできるまず最初のステップは、五感を通して気分を変化させること。音、香り、味、目にするもの、肌触りなどの感触を活用します。私たち人間に発達した感覚が備わっているのは決して偶然ではなく、知的生物として生き抜くためのサバイバル機能だから。五感を通して不快感を感じるとサバイバルが刺激されますが、反対に心地よさを感じると安全・安心感を感じることができます。五感を刺激することで自分の気分に変化を与えることができるのです。
たとえば、こんなことをしてみてください。
インドア派であれば
アロマを炊く、気分が上がる(または落ち着く)音楽をかける、お風呂に浸かる
料理をする、イメージングをする、メディテーションをする
写真集を眺める、本を読む、植物の世話をする、ヨガをする
アウトドア派であれば
散歩する、水辺に出向く、木々の多い場所に行く
動物や植物に触れる、外で食事をする、キャンプ、ピクニック
自転車に乗る、運動する、ドライブを楽しむ、非日常の風景を見にいく
ペルソナをクリエイトする
気持ちが落ち込むとき、次にやってみて欲しいのは「理想の自分像」を書き出してみることです。これは、自分の持つペルソナを改めて考えてみる作業でもあります。
心理学でいうペルソナとは、自分が持つさまざまな「顔・仮面」のこと。私たちは皆、さまざまな顔を持って生きています。職場での顔、自宅での顔、実家での顔、親しい友人との顔、深い付き合いではない人との顔。サブパーソナリティーと呼ばれることもあるこのペルソナは、私たちが社会というコミュニティーの中で自分の役割を果たしたり、他人の期待やニーズに応えながら自分の立ち位置を確保することに役立っています。それぞれのペルソナがあまりにも違いすぎると多重人格的だと思われてしまいそうですが、実際には自分の持つさまざまなスキルを、場所や人に応じて少しづつ違う出し方にしている、という捉え方をすると分かりやすいかもしれません。
また、心理学では人生を午前と午後に分けて考えることがありますが、たとえば人生の午前(前半)では場所と人に応じて使い分けているペルソナも、人生の午後(後半)になると自分の中を整理して、もっと統合させていきたいという願望が芽生えてくることがあります。いくつかのペルソナが統合されて新しい自分像ができていく、ということもあるかもしれません。それは例えば、もっと自分らしい生き方を追求したくなったり、利己主義を超えて社会貢献できることをしたくなったり、周りの価値観に振り回されない自分を強化したくなったりなどして、社会の中での自分の役割が変化してくることによって、自分のペルソナも成長してゆきます。
そんな時にやってみるといいエクササイズが、「理想の自分像」をクリエイトすること。これからの自分がどんなふうに成長していきたいのかを考える、自分を向き合うワークです。
たとえば下記のような方法で、ノートを用意してステップに沿って書き出してみましょう。
*これは心理学者ロベルト・アサジョーリのサイコシンセシス”Ideal Model”を応用したものです。
ステップ1)「いろんなことがうまくいっていていい状態の時の自分」はどんな自分かを書き出します。
ステップ2)「いろんなことがうまくいかなくて、落ちている時の自分」はどんな自分かを書き出します。
ステップ3)現実的に「人が自分をどう見ているか」を書き出してみます。以前に自分に関してコメントされたことや評価された内容などをもとに、自分は他人からこう見られているだろうな、というものを足し算引き算なしで書き出してみます。
ステップ4)「人は自分に何を期待しているか、どんな自分でいて欲しいと思っているか」を書き出します。これは、対象となるその人が誰かにもよるかと思いますが、この場合は自分の人生で身近な人たち全員を対象にして考えてください。家族から職場の人、友人関係まで、身近に関わる人たちが自分に抱いている期待や思いを、想像して書き出します。
ステップ5)「自分の最高バージョンの理想の自分像」を書き出します。こんなの無理、なんていう制限なしで、最大限の可能性がポジティブに実ったら一体どんな自分になれるかをワクワク想像しなながら書き出してみてください。
ステップ6)ここまで書いたら、一旦休憩をしてください。お散歩したり、全然違うことをして気分転換をします。最低でも30分~1時間ほどの休憩をしてください。
ステップ7)再び、「改めて、これからの自分がどんな自分になっていきたいか」を書き出します。
ステップ8)最後に書き出した「どんな自分になっていきたいか」をもとに、それに向かって今、そしてこれからできることを小さなことから大きなことまでプランニングしていきましょう。
私たちは全てを持っている
自分の心の持ち方も心のあり方も、その材料はもう既にあなたの中に備わっています。外に持求めるのは、自分の持っている素材を引き出してくれる情報や交流、人との関わりや刺激的な体験で、自分の内側にあるものを引き出して調理するための調味料のようなもの。
あなたの人生は、自分が綴ってゆくストーリーであり、いつか完成するものがたりです。モヤモヤする気持ちでさえもそのストーリーのページを埋めるストーリーなのですから、どんな風に気持ちを整えていくかというその過程も、もちろんちゃんとしたストーリーの一部です。自分なりの工夫を重ねながら生きる体験を愉しむ方法を、色々と試して心を調整していきましょう。
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