静岡県で「里山の暮らし」を営む庄子妙絵さん。ご主人「たっちゃん」やご近所さんたちとの日々の出来事をときどきコラムに綴ってくれています。コラム第3回目は、人と自然が優しく、そして実用的な形で共存する里山暮らしについてです。
里山の古民家に引っ越してきたきっかけは、たっちゃんの「遊べる雑木林のある家が良い」という想いからでした。当時、私は里山と言う場所がどういう場所か全く理解していませんでした。
私たちが住む古民家は、小さな集落の真ん中に田んぼがあり、それぞれの家の後ろに小さめな山がある、そんな地域です。
う〜ん分かりにくい。
言い換えると、里山の雑木林や山は人の手が入っている、人が管理していると言う事です。
ある外国人が里山をこんな風に言っていました。
「里は英語で”Village”、山は”Mountain”。里山はちょうどヴィレッジとマウンテンの境の地域で、人が自然と共存して暮らしている場所。里山の雑木林は人が手を入れる事で日光が良く行き届き、生態系豊かな自然が実現出来ている。これは昔ながらの日本人の循環型の暮らしである。」
この外国人の着眼点を知ったとき、「なんだか里山の暮らしの可能性ってすごいかも!」と、ワクワクしてしまった。
私たちが引っ越してくる前、この家は15年間誰も住んでいない状態で裏山も放置されていました。15年間ヒトが入っていない裏山は荒れ果て薄暗いジャングルのようでした。暗く気味が悪い感じがして、裏山に入るのも始めは躊躇していました。たっちゃんが少しずつ木を切り、草刈りをしていくうちに、徐々に日光が届く明るい雑木林になってきました。だんだんとそこにはあらゆる種類の木がある事が私にも見えてきました。立派な茶畑があり、竹林がまとまって生えている場所を知り、大梅の老木や小梅の木、柑橘の木も見つける事ができました。同時に私たちの前に住んでいた方々が代々、長くに渡ってこの裏山と共に暮らしていたんだと感じました。
静岡県の”茶草場農法”が世界農業遺産に認定されたとき、「すばらしい!」と思い、お隣さんにその事を話題にした事がありました。
お隣さん:「茶草場農法?な〜にそれ?」
わたし:「茶草場農法は、茶園の周りの土地の草木を刈って干して、茶園の土の肥料にして、土を肥やす農法だよ。里山の草木を活かした循環型の農法が評価されたみたいよ〜。」
お隣さん:「そんな事は私が小さい頃は当たり前のようにやってたことよ。自分の山の草木を刈って家畜の餌や畑の肥料にしたり、モノの無い時代はみんなそうやって里山を活かした生活をしていたのよ。今じゃみんな町に行っちゃったけどね〜〜。。。」
ちょっと待って、頭の中を整理したい。
まず私は”茶草場農法”が循環型のエコな農法として世界農業遺産に登録された事を知る。そしてお隣さんから、「そういう里山を活かす暮らしはおばさんたちが小さい頃は当たり前のようにみんながしていたことなのよ。」と言われる。
そうなんだ!里山の暮らしは循環型なエコな暮らし方が可能なんだ。そのことをあらためて認識させてもらった気がして再びワクワクしてしまった。
引っ越してきてまだ5年ですが、里山に少しずつ手を入れるうちに、お茶が摘めるようになり、様々な種類の山菜、たけのこ、柑橘、梅、しいたけなどの恵みをくれるようになりました。そして去年はニホンミツバチとの出会いもありました。
放置された里山は日の入らない薄暗いジャングルになってしまうけど、私たちヒトが手を入れメンテナンスする事で里山は🌀グルグルと循環しめぐみを運んでくれる。
里山が循環してきたことをじわじわ〜と少しずつ実感し始めているこの頃です。
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#里山の暮らし
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