クライアントの許可を経てこちらにシェアします。
戦場のシーンなどが出てきますので、苦手な方は読むのをご遠慮ください。
アメリカ人女性のローレンは、約1年前に私のオフィスを訪れました。41歳だった当時の彼女は、親しい友人を亡くして辛い経験をしていた矢先に、勤めていた会社の規模縮小によって職までも失うという大変な時期にありました。そんな中でマイケル・ニュートン博士の著書"Journey of Souls"に出会って、Life Between Lives (中間世セラピー)のセッションを受けてみたいと思ったそうです。
マイケル・ニュートン博士は、クライアントは中間世セラピーを受ける前に、必ず一度は前世療法を受けておくべきだと話しています。中間世セラピーは非常に深いトランス状態を要するため、それに近いトランス状態である前世療法を受けることで準備が整う、との見方があるためです。
今まで前世療法はおろかヒプノセラピー自体を受けたことがなかったローレンは、まずは前世療法を受けることになりました。今回のブログでは、彼女の前世療法での体験についてここにシェアしたいと思います。彼女の中間世セラピーについては次回のポストで。
セッション当日、少し緊張した様子でやってきたローレンは、前世での人間関係のカルマに興味があると話していました。恋人や親しい人々が他の人生でも一緒だったことがあるのか、自分の魂は他にどんな人生を生きてきたのかなどの、スピリチュアルな好奇心に溢れていました。
セッションが始まると、普段からメディテーションをするのが習慣になっているというローレンは、催眠の誘導に自然に応じることができ、前世療法に必要なレベルのトランス状態へとスムーズに導かれていきました。そして、前世の場面へ。
前世でのストーリー
最初に見た場面は夜。自分は広い野原の中でしゃがんで隠れているのだと言います。トウモロコシ畑のような、背の高い草がたくさん生えている野原で、敵に見つからないように息を潜めて隠れているのだと話します。
くたびれた茶色のブーツのような靴を履いていて、ズボンを履いているといいます。そしてくたびれたジャケット。やがてそれが軍服なのだとわかります。
ブロンドで癖のある髪、年齢は二十一歳ごろだそうです。とても痩せています。それもそのはず、とてもお腹が空いているそうです。名前はイームス、という言葉が浮かんだそうです。
「私たちのグループは、敵に目をつけられたので隠れているのです。近くに民家があるわけでもない、何もないただっぴろい野原に隠れています。しばらくこうしていたので、敵がまだ近くにいるのかは分かりません。でも動いて見つかるのもリスクです。手にはマスケット(銃の種類)を持っています。」
不安そうな声で言いました。
次第に、イームスが参戦しているのはアメリカ南北戦争だということがわかります。場所はどのあたりですか?年号は分かりますか?と聞くと、
「バージニア州、というイメージが降りてきます。時代は1864年という数字が浮かんできました。」
そう答えると、この戦いが自分たちに優位に動いていないこと、皆が強い緊張感と疲れを感じていることを語ります。残してきたパートナーがいるのかと聞くと、
「結婚はしていませんが、サラという女性に恋をしています。」
と答えました。
「では、少し時間を戻して、あなたが兵士になる前に何をしていたのか見に行きましょう。」
私がそう誘導すると、イームスは故郷の小さな街で暮らしている様子を話し始めました。
「うちの両親は店をやっています。生活雑貨や食べ物、道具などを売っている店です。場所は同じくバージニア州ですが、さっきいた場所よりももっと南西側、という印象です。小さな街ではありません。私たちは自分たちの街を大きな街だと思っています。でも、戦争に参加していくつかの街を見ていくうちに、自分の故郷が小さな街だったのだと知りました。父が店をやっていて、私は手伝っています。店番をしたり、配達をしたりもします。店の上に家族の住居があります。弟がいたけど、病気で亡くなってしまった。私が十歳、弟は六歳の時のことです。」
淡々と話し続けます。
「生活自体はとても平和です。店にはいろんな人が来て、猫たちも遊びにきます。鼠取りをしてくれてる。馬車のための馬もいます。」
そして、じっと観察してみるとイームスの父親の雰囲気が、今世ではローレンの母親のような気がする、と言います。イメージが重なるのだそうです。心の距離の近さも似ているのだと言います。
そして少し沈んだ口調で、自分(イームス)も父親も、幼くして亡くなった弟の死を何年も引きずっているのだ、と話します。
「でも、母は違います。だから私は母に対して違和感を感じています。彼女がどうして息子の死をあんなに早く乗り越えることができたのか、私には理解できません。弟が死んだ後、母はあっという間に気持ちを切り替えたのです。私今でもとても辛いのに。私は男性にしてはとても感情的な性格です。」
そう言うと、しばらく黙りこみました。何が起きていますか?と尋ねると、
「サラが店に来ました。服を作るための青い生地を買いに。」
と答えます。
サラとは誰ですか?と尋ねると、店に時々やってくる自分の片思いの女性なのだと言います。
「サラは茶色い髪を無造作に束ねてアップにしている。とても可愛らしい人です。」
サラのことをよく観察してみると、今世のローレンの親友、オードリーの雰囲気と重なるのだと言います。ソウルグループの一人なのでしょう。
イームスは彼女を好きなのですが、でもそのことをまだ伝えてはいません。シャイなイームスにとって、買い物する彼女を店の従業員として手伝うことが精一杯なのだそうです。サラはよく洋服を作るための生地を買いに来るそうです。サラはあなたの思いに気がついていますか?と尋ねると、
「気がついているかもしれません。私は感情を隠すのが下手ですから。」
と言って微笑みました。
場面が変わって、戦争に参加することを決めたのだと話し始めました。
「母は私が兵士になるを誇らしいと思っているようです。でも父は、私に行って欲しくないようです。私も戦争には行きたいわけではありませんが、でも、みんなが行くから自分もそうしようと思いました。強制されたわけではありません。」
ちなみに、イームスの母は、今世ではローレンの姉のような気がする、ということです。雰囲気が重なるのだそうです。母のことを愛してはいるが、でも理解できないのだと、重たい表情で繰り返します。
「弟が死んだ時、母はすぐに立ち直りました。それが私にはずっと理解できませんでした。弟が亡くなってから何年もの間、私も父もずっと苦しんでいます。そのせいで私の心は母から離れてしまいました。弟の死を簡単に乗り越えてしまった彼女のことが許せないのです。近い将来、母のそばを離れたいと考えていました。だから兵士になることを志願したのだと思います。」
そして、戦場へ旅立つ兵士たちを祝うパーティーが行われます。30人ほどの、家族や友人たちが集まったパーティーで、自分を含めて5人の兵士がいるとのことです。
「皆がドレスアップしています。私も自分が持っている中で一番いい茶色のスーツを着ています。女性たちがとてもきれいです。たくさんのパンとバター、いい肉などの美味しそうな食べ物があります。ああ、バターがとても美味しいのです。楽しい夜です。サラもいます。私はとてもシャイなので、気持ちを伝えることができません。彼女は、私を誇らしいと言ってくれました。花を渡してくれましたが、それが私に対する恋心を表しているのかは分かりません。ここにいる女性たちは皆、私たち兵士を誇らしいと思っているようですから。」
イームスは、結局サラに気持ちを伝えることはなく、戦場へと旅立ちました。
そして、再び最初に見た戦場の場面へと戻ります。
「戦場はひどい状態です。大きな音がしています。たくさんの悲鳴が聞こえます。笛の音、銃声、そして大砲の音。頭の中に響き渡る恐ろしい音です。私たちは負けています。自分はこんなことに向いている人間じゃないと感じています。戦うことは自分には合っていません。」
辛そうな表情です。
「自分にできる限りのことはした。でも全てが十分ではないのです。人も足りない。武器も足りない。だから、勝てる見込みがない。周りには、死んでしまった兵士や、傷ついて助けないでいる兵士たちがたくさん倒れています。助けてくれと、私にしがみついてくる傷ついた兵士も。そんな彼らから弾丸や銃をとって、動ける者たちはまだ戦い続けなければなりません。」
非常に辛い様子で状況を説明します。
「こんなことをしたいわけではない。でも動き続けなければ気が狂ってしまう。だから止まれない。本当は誰のことも傷つけたくない。ああ、私は、右足をやられました。折れたしまったみたいです。もう歩けません。」
そう言うと、しばらく静かになりました。
今何が起きていますか?と尋ねると、
「医者やナースがいるところで、横になっています。他にも、傷ついた兵士たちが苦しみながら叫んでいるのが聞こえます。私の足はきちんと治療されないまま放置されて、感染してしまったようです。もうダメだと分かります。医療設備が十分でないから、医者も十分な仕事ができないし薬もない。ひどい痛みを感じます。全てがめちゃくちゃです。」
家を出てからどれくらい経っていますか?と尋ねると、
「はっきりと分からないけれど、多分2年くらいだと思います。周りの兵士で日記をつけてる者もいるけど、自分はそういうことはやっていないからはっきりとした日にちは分かりません。」
そしてイームスの身体は弱っていき、やがて死に至ります。
「足の感染が進んで、私は死ぬようです。」
死ぬ時に、誰かそばにいましたか?と尋ねると、怪我をして運ばれた戦場の治療施設で、夜中に死んだのだと話します。
死を迎える前に、最後に感じていたことはなんですかと尋ねると、
「戦場で、私は生きるために戦いたいと思わなかった。全てを諦めてサレンダーしました。もし弟が生きていたら、自分は兵士にならなかったでしょう。弟の死と向き合う辛さが、戦争に参加してもいいと自分を思わせたのです。」
と答えます。
魂が身体を離れたため、表情が少し和らいでいます。
「向こう側(魂の世界)へいく前に、様子を見にいきたい人や場所がありますか?」と尋ねると、
「実家に行きます。最後に見たこの世界の光景が戦場だなんていやですから。」
そう言って、故郷の様子を見にいきました。
「私の死の知らせを受け取った母がとてもかわいそうです。二人の息子を亡くしてしまって。私の魂は母のそばに寄り添っています。父もひどく悲しそうです。」
そう言うと、何かハッとした様子で語り始めました。
「分かったことがあります。母は、私の弟が亡くなった時にすぐに忘れて立ち直ったのではなくて、前向きに生きると強い意志で決めたのです。私はそのことを知らずに、彼女を恨んでいました。私はただ引きずることしかできなかったから。でも母は、自分の感情と上手に付き合うことができる人だったのです。だからといって、彼女が悲しみを感じていなかったわけではありません。ああ、私はそのことを知っていたら良かったのに。」
とても驚いた様子でした。涙を流しながら、母に冷たく接していたことを悔いていると話します。
「私たちはとても違う性質を持った親子でした。そして、私は彼女のことを自分のレンズでしか見ることができなかった。」
しばらく両親のそばに寄り添っていたイームスの魂に、あなたのサラへの想いはどうですか?と尋ねると、
「戦場から彼女に手紙を書いて、結婚を申し込んでいました。彼女は、戦争が終わったらそうしましょう、と返事をくれました。」
と答えます。では、サラの様子を見に行きますか?と尋ねると、
「いいえ。彼女の邪魔をしたくありません。きっと他の人と幸せになるでしょう。」
と、穏やかな声で答えました。
ガイドとの再会
そして、イームスの魂は、あちら側(魂の世界)へと旅立ちました。そこでは、まず彼のリピリットガイドが待っていました。あなたのスピリットガイドはどんな風貌ですかと尋ねると、
「年長者の男性的な人です。灰色の長い髪をポニーテールにしています。でも多分、彼はいつもこの姿をしているわけではないという気がします。姿形を変えることができるのだと思います。今は、私の前でこのような風貌で現れることに意味があるからそうしている、という感じです。」
そう言うと、しばらく静かになりました。スピリットガイドとのテレパシーでの会話をしている様子です。どんな会話をしているのですか?と尋ねると、
「朝日のような美しい光の場所にいます。ガイドからとても暖かいエネルギーを感じます。辛い戦いの後だったので、優しく癒そうとしてくれています。私を見守るようにして観察してくれています。」
そして、続けます。
「あの重たい戦場での体験が辛くて、その重たさを癒したい一方で、簡単に手放したくないという矛盾した思いが私の中にあるのです。辛い体験をした自分へのリスペクトと言うか・・・。うまく言えないのですが、すぐに癒したいとは思わないのです。でも、スピリットガイドは、気持ちは分かるけど、でもずっと抱えている必要はないと言っています。手放してもいいんじゃないか、と優しく言ってくれています。でも・・・と言って反発する私に、お互いの妥協点を見つけようじゃないか、と冗談っぽくガイドが言いました。私は同意することにします。」
そして次の瞬間、ガイドから穏やかな自然の中の木の下へと導かれたそうです。
「私は木の下に座っています。そしてガイドはこの美しい場所で、一瞬にして私が抱えている重たさを取り除いてくれました。軽くなりました。私は、もう少しここに座っていたいと伝えます。ガイドはそうしなさいと言ってくれました。」
そうやってしばらくの間、木の下の穏やかなエネルギーの中で癒されたイームスの魂は、次の場面に移る準備ができました、と言います。
するとガイドが、イームスの魂が、「人生の振り返り」をするのにふさわしい場所へと連れて行きます。そこは大学の図書館のような場所で、頑丈な木造りの、立派な本棚が並んでいる大きな図書館のような場所だそうです。机を挟んで、向かい側に帽子を被ったガイドがかしこまった様子で座っています。アメリカの大学の卒業式で被る黒い角帽をかぶっているのだそうです。ガイドのイメージと不似合いな様子が可笑しくて、笑ってしまうと言います。するとガイドが、
「人生を真面目に考えすぎてはいけないよ。」
と、冗談っぽく言ったそうです。笑わせるために、わざとそんな様子で現れたとのこと。
「ガイドは、お疲れ様、と言ってくれました。そして、私がいつも人生を真面目に捉えすぎる傾向があるのだと指摘しています。イームスも、そしてローレンもそうです。」
淡々と続けます。
「イームスの人生では、バランスを取ることを学ぶという課題があったのではと感じます。イームスはとても真面目で、全てを真面目に捉える人でした。そして、弟の死をきっかけに重たい感情を抱えてしまいました。真面目な彼はそれを癒したいと思わず、そのことが結局、彼を若死する道へと向かわせたのです。ガイドは、そんなに真面目になりすぎなくてもいいと言っています。人生はそこまで真面目になるすぎる必要はないのだと。そう言われても、私にとっては簡単なことではありません。」
さらに続けます。
「イームスは他人にこうあって欲しいと強い期待を寄せるタイプではありませんでした。でも、母に対しては違った。なぜなのでしょう。これはもしかすると、別の人生での絡みもあるのかもしれません。同じソウルグループに属しているようですから。」
そして、戦場での出来事を振り返ります。
「イームスは、誰のことも傷つけたくなかった。戦争は恐ろしいことです。」
でもそんな戦場でも、楽しい時間があったのだと言います。
「イームスは本を読むのが好きでした。戦場では、キャンプファイアーで火を囲みながら、仲間たちに本の物語を読み聞かせたりすることがありました。みんなで食べ物の酷さをジョークにして語り合った楽しい時間もありました。」
さらに続けます。
「ガイドは、”人生に真面目になりすぎない”という学びについて、今世を生きるローレンはイームスよりもずいぶん上手くなってきていると言っています。。でもそれでも、ローレンも真面目ですね。そんなに真面目になることはないよと、ガイドは繰り返します。もっと幸せを受け入れてもいいのだと。ローレンは、若い頃に自分はいろんなことを期待するべきではないと諦めた時期がありました。」
そう言うと、しばらく沈黙しました。
ガイドはそのことについてなんと言っていますか?と尋ねると、
「戦争に行って死んだ、兵士だった別の人生を見て分かったことがあるでしょう、と言っています。ローレンは、今の人生でもっとリラックスして楽しんでいてもいいのですよ、と。」
そして、しばらくローレンとガイドとの会話が続きました。(プライベートに関することなので、ここは省略します)
ガイドとの時間が佳境に近いてきました。私(セラピスト)は、イームスとローレンの両方が抱えてきた重たいエネルギーを、ガイドの力を借りてさらに浄化するようにと誘導します。
「意識が拡張していくのを感じます。ガイドが重たいエネルギーを浄化してくれています。癒しの光が拡がっていきます。とても自由な気持ちです。恐怖心も消えていきます。」
そう言った彼女の頬を、涙が伝っていきます。
「ガイドとの繋がりを信頼することができます。人生を一人で歩んでいるのではないということが、あらためて分かりました。普段なんとなく感じていたスピリチュアルなエネルギーを身近に感じて、素晴らしい気持ちです。」
彼女の表情がずいぶん柔らかくなりました。
「ガイドが、鍵を見せてくれています。よくある普通の鍵なのですが、どんな意味があるのかと聞いたら、『これであなたはいつでも知恵の扉を開けて、答えを見つけることできますよ』と言っています。鍵を手のひらにおいてくれました。」
それでは、その鍵を胸にあててください。これからずっと、この鍵があなたのハートに納められていることを覚えておきましょう。そう提案すると、彼女は静かに頷き、しばらくの間静かになりました。
そしてガイドにお礼を伝えて、セッションが終了しました。
セッション後
トランス状態から目覚めたローレンは、前世療法が予想以上に深い体験だったことに驚いていました。色んな意味で深く浄化された気がすると言い、身体もとても軽いのだと話します。
「私と姉の関係は、イームスと母親の関係のように複雑なの。全く違う性格と考え方をしていて、お互いに理解できないと思っているの。自分たちの関係と、少し違う角度から体験したような気がする。面白いわよね。」
と話します。
また、「人生に真面目になりすぎる」ということにも心当たりがあるのだと言いました。
「前世療法でこれだけ深い体験なら、中間世セラピーは一体どんなことが起きるの??」
と言い、好奇心いっぱいの様子でした。
もともとは中間世セラピーが受けたくて予約してきたローレンでしたが、前世療法でかなり深い体験ができたとのことで、しばらく次のセッションを予約するのは待ちたいと言う結論になりました。前世療法を受けられる方には、そういった感想をも持たれる方も多くいらっしゃいます。
そして約1年後、中間世セラピーを受けるために再び私のオフィスに戻ってきます。
そして余談ですが、私がセラピストとして興味深かったのは、ローレンがイームスの人生を体験している時、彼女の口調が完全に南部訛りになっていたことです。(イームスが暮らしていた
バージニア州はアメリカ南部に属します。)ローレン自身は南部には住んだことがないし南部訛りを話す人も周りにはいないということですから、非常に面白いなと思いました。
次のセッションの内容は、次回の記事に。
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