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天日干しのお米 *里山の暮らし*

静岡県で「里山の暮らし」を営む庄子妙絵さん。ご主人「たっちゃん」やご近所さんたちとの日々の出来事をときどきコラムに綴ってくれています。今回は、稲刈りのお手伝い日記です。手間をかけて出来きあがる天日干しのお米はほんとうに美味しそうです。稲束が美しい日本の原風景にも心癒されます。


猛暑がようやく落ち着いてきた頃、稲は日に日にグリーンからコガネ色へと変わっていく。我が家ではお米を育ててはいないけれど、ご近所の稲刈りのお手伝いは毎年恒例となっている。


お手伝いは、刈られた稲を天日干しにする「はんで掛け」という作業。木と竹で組まれた干し台に稲の束を干していく。天日に干されたお米は、甘味が増すと言う。初めて天日干しのお米を食べた時、お米の味が濃く甘く感動の美味しさであった。


9月の始め、田んぼの周りの草を刈っていたお隣さんに、「稲刈りそろそろかな?!今年はどんな感じ?」と伺う。


お隣さん:「今年は暑かったから、所々もう稲が倒れてきちゃってるよ。来週あたりかな?!今年も頼むよ〜。」


私:「りょ〜かい!また声かけてね!」



9月6日


朝から不安定な空模様。雲はモクモクと沸いては消えてを繰り返している。


午前中、「お〜い!」と、玄関からお隣さんの呼ぶ声。


私:「は〜い!おはよう〜!」


お隣さん:「今日午後、頼むよ〜。」


私:「はいよ〜!」


お昼過ぎ、準備をして田んぼへと下りる。早速刈られた稲を干し台まで運び、せっせと干していく。


稲刈り機を押すのはご主人のイワさんで、竹と木の干し台を組むのは奥さんのトモエさん。刈られた稲を干すのは私とトモエさんの仕事である。


「ボチボチやるさ〜〜」「休憩とるか〜」「はい、これ飲んで。これ食べて」とトモエさんは声がけをしてくれながら、3人でのんびり頻繁に休憩を取りながら作業をしている。



手を動かしつつも気になる空模様。少しずつ雲が集まり始め厚い層となっていくよう。あれれ?だんだん暗くなってきたぞ。ちょっと急ごう。今にもポツポツとしてきそうな空を気にしつつ、作業の手を早める。



ようやく最後の束を掛け終える頃、ポツポツと雨が降ってきた。


私:「ははは〜危なかったね〜絶妙なタイミングで掛け終わったね〜。これもイワさんの計算でしょ?!😄」


イワさん:「そうそう。計算計算。ハハハ〜😄」


南の台風の影響で、明日は一日雨の予報。



9月10日


朝、ゴミ出しを終え空を見上げる。ん〜〜〜まだ6:30なのに雲が沸き始めているな〜〜。この時期の空の変化は目まぐるしい。



午前中、自転車で通りかかったトモエさんの左手の人差し指に包帯が巻かれている。


私:「あれ?トモエさん指どうしたの?」


トモエさん:「やっちゃったよ。指切っちゃって腫れちゃったのよ。病院で手当てしてもらったんだけど傷が乾くまで作業はダメって言われちゃって」


私:「ありゃりゃ。そりゃ大変だ。痛いね〜。稲のことは心配しないで!」


トモエさんは申し訳なさそうに「大事な時期に嫌になっちゃうよ〜。頼むね〜」と。この日は午前中お手伝いをし、午後には雨が降ってきた。



9月11日


朝、洗濯機を回しながら、気になる事は作業のこと。今日は、稲刈りできるかな?田んぼに機械入っていけるかな?


昨日は午後から雨が降ったり止んだりであった。田んぼの地面は水を含み過ぎると機械は入っていけず稲刈りはできない。


洗濯機が回り終わる頃、田んぼから、「ギーガッシャン、ギーガッシャン!」という稲刈り機の音が聞こえ始めた。お、イワさん始めたんだ!よし、洗濯干したら私もお手伝い。


長袖にモンペ、首にタオルを巻き帽子をかぶる。靴を履きながら「今日は、雨に降られませんように〜」と祈る気持ち。


午前9時の時点では、雲も少なく良いお天気。



ビビッドに色濃い青空と緑が眩しい。日差しは程よく強く、空気は湿気を帯びている。田んぼに降りると、昨日の雨のせいで地面はぬかるんでいる。お〜今日の作業は、結構足にきそうだな〜〜😅



ぬかるんだ地面を少しでも乾いた場所を探しながら歩くも、靴にモッタリと泥がこびりついてくる。イワさんも私も重くなった靴を持ち上げるようにヒョコヒョコと歩く。イワさんは稲刈り機を押し、私は刈られた稲を運び、ハンデに掛ける。


「ボチボチやってな〜」と声がけをしてくれるイワさん。


途中、トモエさんがシャーベットを持ってきてくれて、ちょっくら休憩。


「私の指がこんなで悪いね〜」とトモエさんはまたまた申し訳なさそうに言う。

「いやいや、平気平気〜このシャーベット美味しいね〜ノドに染み入る〜〜」


「さあ、もう一息!」とイワさんと作業に戻る。空に雲が少しずつ、集まり始めている。



11時半、最後の稲の束をハンデにかけ終わる。


「やった〜終わった〜!」


稲を全て借り終え、イワさんも安心したよう。二人で、モッタリ泥のついた重い足をヒョコヒョコさせながら田んぼから上がる。



お疲れ様でしたと挨拶をし、家に帰り縁側で一息つく。ふと見下ろすと、泥まみれな靴😅。。。靴を脱ぎ、ホースで靴の泥を落とす。




昼食を済ませ、満腹と良い疲労感に浸りながら畳にゴロンと横になる。今年の稲刈りも終わった。しばらく稲は天日に干され甘味を増していくだろう。


数日後。。。

作業もいよいよ終盤に入る。本日は稲を下ろし、脱穀のお手伝い。



良い具合に干された稲を下ろし脱穀機にかけていく。


グァ〜〜ンという大きな機械音とともにパラパラパラ〜とモミだけが袋に落ちていく。イワさんが稲の束をスムーズに脱穀機にかけられるよう、稲を渡していく流れ作業。



「パラパラパラ〜〜」とお米が入っていく音。良い音だな〜〜。滑り台を滑るように入っていくお米につい見惚れる。



次に会う時には、キラキラの新米になっているんだな⭐️


ご飯に合うお供を何にしようか、楽しい美味しい妄想は広がる^^。



9月24日


朝、つきたての新米をイワさんが届けてくれた。


イワさん:「今年は、不安定な天候のせいか、形がいまいちで美味しいかわからん」


私:「いやいや、美味しいに決まってるよ!」


イワさんに「美味しいかわからん」と言われて頂いたもので美味しくなかったことは一度も無い 😋。さて、今年はどんなお米になっているのかな?


早速炊いていきま〜す。



炊飯器を開けると、ツヤツヤ、キッラキラの新米✨そうそう、この一粒一粒が立っている感じ^^



いただきま〜す!


みずみずしく、弾力のある食感、かむとじんわりお米の旨味と甘味が出てくる。大変美味しゅうございました!


例年に比べて若干甘味は少ないと感じるものの、大変おいしいご飯でした。この新米に何を組み合わせて食べるかも、この時期の楽しみ。しばらくは、お米に合うメニューが食卓に並びそうです。



今年は、長雨+長期的な猛暑で稲は苦しんだ。それに加え「ウンカ」という虫の発生も至る所で起きていた。噂では、コロナの影響で大陸の稲の消毒が十分に出来なかったせいでウンカが大量発生し、日本にも風で運ばれてきたそうだ。ご近所さん達は、こんなにウンカが発生したことは今までにないと、言っていた。大陸で消毒がされればウンカの影響はない。。。なんだか複雑な気持ち。。。


お隣さんは消毒も除草剤もしない。その代わり、どんなに暑くても頻繁に草刈りをし、田んぼに入ってはジャンボタニシをとり、手間をかけている。


安心安全なものを育てるということは、たくさんの時間と手間のかかることである。でも、手間がかけられたものにはそれだけの想いが詰まっていて、より美味しくより貴重に感じられる。


間近で「安全な食べ物を育てるということ」を学ばせていただいている。


教えていただける先輩方がいることに感謝しつつ自分も畑をやりながら、虫や天候に左右されながらも手間をかけ「安全に育てる」ということを日々勉強中なのです🤔。



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